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太鼓のチューニングの話

夢でスネアドラムのチューニングをする夢を見たので思い出したことをつらつらと書いてみよう。

 

高校生の頃、僕は吹奏楽部で打楽器をやっていた。
なんで打楽器を希望したかというと、やってみたかったサックスが空いておらず、他に打楽器くらいしか楽器を知らなかったからである。
千葉県下ではそこそこ強豪校であったうちの高校は、部活の指導も厳しく、逆に言えば良い演奏技術を習得できたのだと思う。

 

よく「打楽器って音程とか分からなくても出来るよね」と言われるが、そんなことはない。
代表的なのはティンパニである。
主に足のペダルで音程を調整するのだが、古いティンパニにはゲージと呼ばれる音の指標になる矢印が付いていない物があり、金管楽器がワンワン唸る演奏中にハーモニカのような物をそっと吹きながら音程を調節したりしなければならない。
打楽器もけっこう繊細なお耳が必要だったりするのだ。

演奏以外にも耳を酷使したのが太鼓の皮の張替えやチューニングである。
太鼓というのはどれも大概構造が一緒で、胴と呼ばれる筒にかわを被せ、それを留め具の付いた金属のリングで引っ張ってテンションをかけていく。
この輪っかに付いた留め具は小太鼓でだいたい6~10個ほど付いているのだけれど、これをチューニングキーという器具(屋外用の水道のハンドルのようなもの)でキコキコ締めるのだが、この作業気が狂いそうになるのだ。
指南書などを見ると「皮の張りが均一になるように対角線上に締めていきましょう。アチコチ叩いてみてすべて音程が均一になるように張りましょう」と軽く書いてあるのだが、これが全くと言っていいほど合わない。
一方をコンコンと叩いて対角線上の部分もコンコン叩き、音が低い方を絞めるわけだが、皮は地続きになっているので、締めた反対側も若干引っ張られて高くなる。
それを避けるために高かった方はちょっぴり緩める。
ヒーヒー言いながら10本の金具全部合わせたかと思えば、最初に合わせた部分はぜんぜん違う音になっていたりして、おのずチューニングをすれば発狂者続出、太鼓のチューニングを行っている人はイライラしているので近づかないという不文律が打楽器パートの中に出来るほどであった。

 

そんなわけで皮を均一に張るということだけでも大問題だったのだが、もう一つ「どんな音にすればよいのか」という問題があった。
指南書には「その太鼓の一番よく響く」とかいうすこぶる抽象的な言葉で書かれていた(確かに皮と胴によって全く出る音が変わってくるので一概にいえないのだが)。
また打楽器の皮の張替えは、主に3年の先輩が卒業した後に行われることが多かったので、教えてくれる先輩というのが基本おらず僕らは途方に暮れた。

 

夏休みに大学生の先輩が遊びに来たので、これ幸いと「スネアはどんな音にチューニングしたらいいのですか?」と無茶苦茶返答に困るような質問を投げかけてみた。
この先輩は普段はドラムがすごく上手い先輩で、自宅にドラムを持っていたのでチューニングはおちゃのこさいさいであろうと踏んだのだ。
彼はちょっと困ったような顔をして(こんな質問N饗の打楽器奏者でも困るだろう)しばらく考えていたが、やがてボソボソとこういった。


「まず…自分の一番好きな音を作るじゃん…。
…で…その音をみんなも好きだと思ってくれたら…いいよね。」

今にして思えば苦し紛れの解答だったのかもしれない。
しかしこれが太鼓のチューニングに関するベストアンサーだと僕は思っている。